映画『グッド・ネイバー』感想と考察

※本記事は2019年10月の記事を加筆修正したものです。

 

POVサスペンス映画『グッド・ネイバー』を観たので、感想と考察を書いていきます。

グッド・ネイバー(字幕版)

グッド・ネイバー(字幕版)

 
  • 原題 The Good Neighbor
  • 監督 カスラ・ファラハニ
  • 脚本 マーク・ビアンクリ,ジェフ・リチャード
  • 主演 ジェームズ・カーン, キーア・ギルクリスト, ローガン・ミラー

 まず『グッド・ネイバー』の簡単なあらすじをご紹介します。

『グッド・ネイバー』のあらすじ

高校時代から友人同士の若者イーサンとショーンは、ある実験を企てる。
イーサンの向かいの家に一人で住む老人ハロルドに怪奇現象のドッキリを仕かけ、霊がいると思い込ませるというのだ。
ショーンは心理的実験が半ば目的だったが、イーサンは動画をアップして再生数を稼ぎたいという野望があった。


物語は二人の実験から数か月後の裁判の様子を交えながら進む。
二人はハロルドの家の中にいくつも監視カメラを仕かけて実験を行った。ドアに細工して、誰も触っていないのに何度も開け閉めする。部屋の温度を異常に下げる。オーディオに細工して勝手に音楽を流す。
二人が起こす現象を目撃しても、ハロルドは動じない。
むしろドアを衝動的にオノで破壊したり、地下室に一晩こもるなど怪しい行動を取る。

※ここからラストネタバレ

イーサンとショーンは地下室に何かが隠されているのではないかと疑う。
母子家庭のイーサンは、母が父に暴力をふるわれてハロルドの家に逃げ込み、結局離婚したという過去があった。今回の実験はイーサンの私的な恨みが混ざっていることが少しずつ明らかになる。

二人は嘘の通報をして警察に地下室を捜索させるが、怪しいものはなかった。
ある日、犬に監視カメラを落とされ、しびれを切らしたイーサンはハロルドが寝ている隙に家に忍び込み、地下室に入る。

 

イーサンは地下室を物色するうちにベルを触ってしまい、ハロルドが目を覚ます。
イーサンは最後のイタズラとして、ベルを一階のテーブルの上に移した。
ベルを見たハロルドは拳銃自殺する。

実はハロルドにはガンで亡くなった妻がいた。ベルは妻が自分を呼ぶときに大声を出さなくて済むよう、ハロルドが送ったものだった。
妻の霊がいると思い込み、ハロルドは自ら命を絶ったのだった。

イーサンとショーンは起訴の末有罪となったが、二人に課されたのは2年の保護観察と500時間の地域奉仕のみだった。
ショーンは落ち込み、家族に連れられて裁判所を出た。
イーサンはたくさんの報道陣に囲まれ、笑みを浮かべるのだった。

 

感想と考察

Netflixで鑑賞。

予想以上に面白かったです。遊び半分で誰かを傷つけることの罪を描いた作品でした。

「グッド・ネイバー(The Good Neighber)」は直訳すると「良き隣人」という意味ですね。

 

最初はよくあるPOV式のサイコサスペンスホラーかと思っていました。

宣伝ポスターの雰囲気から「若者たちが嫌がらせした老人はサイコ殺人鬼だった!居場所を突き止められて血の復讐が始まる!とんだ"良き隣人"だぜ!」という話なのかと…。

 

実際、若い女性と部屋で密会する回想シーン(実は妻を世話する訪問看護師だった…)が挟まれたり、至る所にそういう話だと思わせるミスリードが仕掛けられていたので、まんまと騙されました。

浮気がバレて妻を殺してしまい、遺体を地下室に埋めたデンジャラス爺さんの話だと観客に思わせる手法でしたね。

 

けれど、どんどん予想を覆されて話にのめり込んでしまいました。ハロルドが自ら命を絶つシーンで、話が360°引っくり返るのです。

彼は妻を最期まで見守り愛した、とても善良な人間でした…(泣)

 

考察ですが、ハロルドは主人公二人が怪奇現象のようなイタズラをしたことで「妻の霊がいる。私を迎えに来たのだ」と思い込んでしまったのですね。

ハロルドがイーサンの両親の離婚の原因になったのも、イーサンの母を支えて夫と別れるよう説得した、というのが真相という感じがします。

エンドクレジットで浮かびあがるタイトルが突き刺さりました。彼は本当に「良い隣人」だったのに…。なんとも物悲しい結末でした。

 

(ただ、12年間孤独だったハロルドにとって「妻の霊がいる」というのは嬉しいことだったかも知れないですね。

そう考えると、イーサンとショーンは彼の寂しさを和らげられたのかも…?ここをツッコむと話がこんがらがるので深く考えないことにしますが。)

 

ラストのイーサンの「有名になれた」という薄ら笑いの表情が恐ろしいかったです。

でもこういう若者って実際にいそう…。

 

ネット動画で有名になることを目論む描写がリアルでした。

人気取りのためにモラルのない動画を投稿するSNSユーザーがよく報道されていますが、そんな恐怖も描かれていました。

 

動画配信サイトやSNSが発達してなんでも「見る」ことができる時代になったけれど、その向こう側の人生を想像する力が失われつつあることを示唆しているような作品でした。

本当は、人って他人が想像するよりずっと色々なことを抱えているものですよね。

そんなことまで気付かされ、小品ですが良作でした。

 

以上、『グッド・ネイバー』のあらすじと感想考察でした。